決着
「今日は二人とも正々堂々と戦うこと。いいわね」 母はそう言って、手作りのスペシャルドリンクを出してきた。 高校の柔道の試合の時もよく作ってくれたっけ。 懐かしい味がした。 しかし、こんなことぐらいで決心は揺るがない。 絶対阻止だ。
最初からガンガン攻めた。 てめーいつから付き合ってやがった。 左右の連打で追い込んでいく。
タカハシとは高校に入ってからの付き合いだったが、同じ柔道部ということもあって一緒に遊ぶようになった。 柔道部内には中学からの友達もいたが、気がついたら一番の親友になっていた。 それなのに、こいつは…。 やたらと家に遊びに来たのはそういうことかっ? 時折、ローキックをひざ裏に打ち込む。
こいつめっ、こいつめっ! ワンツーロー、ワンツーロー… 奴は防戦一方だ。
対戦成績では分が悪かったが、所詮は柔道の試合でのこと。 こんな打撃は受けたことないだろう。 いい感じでローキックが決まり、奴の体がグラついた。
よし、これでフィニッシュだ。 パンチを放とうとした瞬間、急に視界が揺らぎ、足元がふらつき始めた。 いったいどうしたというのか、体のコントロールが利かなくなった。
母の声が聞こえてきた。 「今がチャンスよ」
頭の中でひとつのシーンが繰り返し再生された。 差し出されたスペシャルドリンク。 それを何の疑いも持たずに飲んだ自分。
一服盛られた!
マスターも同じ事やってますが…。
わしのは結果的に喜ばれたじゃないか!
母の声を合図に奴が背後に回った。 そういえば前回は私が絞め落とそうとしたところを、背負い巻き込みで返されたのだ。 よし…、首に手を回してきたところを返してやる。
その時、雷に打たれたような(打たれたことはないが…)凄まじい衝撃が上から下へ突き抜けた。 奴が脳天にエルボーを落としたのだ。
「前回のお返しだ」 やけに遠くで声が聞こえる。 いつの間にか私は畳の上に倒れていた。 しびれた様な感覚が全身を覆いつくし、ゆっくりと意識が薄らいでいく中、母の嬌声だけが、やけにはっきりと響いていた。
明らかにエルボーが効いたんじゃない。 薬の影響じゃったな、あれは。 いったいどんな薬を盛りやがったのか…。
ハッピーエンドですかね。
どの辺が?


